池澤クリニック

大人の発達障害

どんな病気なの?

発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のうちから症状が現れ、マイペースすぎる、友達作りやコミュニケーションが上手くいかない、といったことで多くは幼少時から小学生にかけて気づかれることがあります。しかし、症状には個人差が大きく、自身や親が発達障害に気付かず、成長するにつれ大人になり、自分自身のもつ不得手な部分に気づき、自分はどこか人とは違う、といった生きにくさを感じることがあります。そして、学校や社会に出て、この対人・社会関係の悪さから、変な人、利己的、など様々なレッテルを貼られ、二次障害としてのうつ病、不安障害を併発したり、場合によっては、アルコールや薬物依存といった手段で、この「生きにくさ」から逃れようと試みたりします。ですが、発達障害はその特性を本人や家族・周囲の人がよく理解し、その人にあったやり方で日常的な暮らしや学校や職場での過ごし方を工夫することが出来れば、持っている本来の力がしっかり生かされるようになります。

 

どんな症状が出るの?

発達障害は、生まれつきの特性で、病気ではありません。発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます。これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通していますが、同じ人にいくつかのタイプの発達障害が併発することもあり、そのため個人差がとても大きいという点があります。

  • ▷自閉症スペクトラム障害
    • 典型的には、相互的な対人関係の障害、コミュニケーションの障害、興味や行動の偏り(こだわり)の3つの特徴が現れます。自閉症スペクトラム障害の人は、最近では約100人に1~2人存在すると報告されています。男性は女性より数倍多く、一家族に何人か存在することもあります。
      典型的には1歳台で、人の目を見ることが少ない、指さしをしない、ほかの子どもに関心がない、などの様子がみられます。対人関係に関連したこのような行動は、通常の子どもでは急速に伸びるのと違って、自閉症スペクトラム障害の子どもでははっきりしません。保育所や幼稚園に入ると、一人遊びが多く集団行動が苦手など、人との関わり方が独特なことで気づかれることがあります。言葉を話し始めた時期は遅くなくても、自分の話したいことしか口にせず、会話がつながりにくいことがしばしばあります。また、電車やアニメのキャラクターなど、自分の好きなことや興味のあることには、毎日何時間でも熱中することがあります。初めてのことや決まっていたことの変更は苦手で、なじむのにかなり時間がかかることがあります。成長するにつれ症状は変化し、人それぞれに多様化します。思春期や青年期になると、自分と他の人との違いに気づいたり、対人関係がうまくいかないことに悩んだりし、不安症状やうつ症状を合併する場合があります。就職してから初めて、仕事が臨機応変にこなせないことや職場での対人関係などに悩み、自ら障害ではないかと疑い病院を訪れる人もいます。子どもの頃に診断を受け、周囲からの理解を受けて成長した人たちの中には、成長とともに症状が目立たなくなる人や、能力の凸凹をうまく活用して社会で活躍する人もいます。
      大人では・・・
      1)相互的な対人関係の障害:柔軟に考えて対応することが苦手で、場の空気を読むことや機転をきかせることが苦手です。また、想像したり共感することが苦手なため、学校や職場での人間関係が上手く構築できません。
      2)コミュニケーションの障害:相手と視線を合わさなかったり、表情や態度などから相手の気持ちをくんであげられないため、自分の言いたいことだけを話したり、相手を傷つくけることを知らずにしてしまったりすることがあります。また、俗にいう行間が読めないため、言葉の意味を文字通りにとらるので、皮肉や冗談や通じないことがあります。
      3)興味や行動の偏り:他人の動向を見ずに、自分に興味があることあけに注意が集中するため、周囲が見えなくなり、例えば、仕事中に話しかけられても気付かなかったりすることがあります。また、一つにこだわるため注意を切り替えることが苦手で、別の用事を急に頼まれると混乱することがあります。また、自分のやり方や手順に強いこだわりがあるため、必要な変更や変化を柔軟に受け入れられず、急に予定を変えられるとパニックになることがあります。
      4)上記外にも、知覚過敏、特に聴覚過敏が特徴的で、ある特定の音や騒がしい場所では音に過度に反応して非常に疲れたり、逆に全く耳に入らず鈍感になることがあり、他者とのやりとりができにくくなることがあります。
  • ▷注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
    • 発達年齢に見合わない多動‐衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。学童期の子どもには3~7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。7歳までに、多動-衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が現れ、そのタイプ別の症状の程度によって、多動‐衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型に分類されます。
      小学生を例にとると、多動‐衝動性の症状には、座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊ぶことが難しい、じっとしていられずいつも活動する、しゃべりすぎる、順番を待つのが難しい、他人の会話やゲームに割り込む、などがあります。不注意の症状には、学校の勉強でうっかりミスが多い、課題や遊びなどの活動に集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやりとげない、課題や作業の段取りが下手、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などがあります。
      子供の場合、これらの不注意や多動の症状があっても、うっかり、落ち着きのない子、で済ませられ、また、親の援助や庇護があるため特段本人も学校や交友関係で困らなければそのまま学校生活を送ることもあります。
      しかし、大人になると、今まで親がしてきてくれたことから離れ(例えば、単身生活で早起きするなど生活面を自分自身で行わなければならないなど)、仕事など社会的な責任をことによって、うっかり、では済まなくなり、先輩、上司、同僚からの注意、叱責、場合によっては罵倒などを繰り返されると、自分は何か人と違う、という違和感を持ちやすくなります。これらにより、思春期以降になってうつ症状や不安症状を合併する人が出てきやすいと言われております。
      また、多動症状は、一般的には成長とともに軽くなる場合が多いですが、不注意や衝動性の症状は半数が青年期まで、さらにその半数は成人期まで続くと報告されています。
  • ▷学習障害(LD)
    • 全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみがとりわけ難しい状態をいいます。
      それぞれ学業成績や日常生活に困難が生じます。こうした能力を要求される小学校2~4年生頃に成績不振などから明らかになります。その結果として、学業に意欲を失い、自信をなくしてしまうことがあります。
      有病率は、確認の方法にもよりますが2~10%と見積もられており、読みの困難については、男性が女性より数倍多いと報告されています。

 

どんな診察や検査が必要なの?

大人の発達障害の診断を行うためには、前述したようにこれらの症状は幼少期や学童期から顕著になりますので、この時代の情報がとても重要です。両親からの情報、母子手帳、通知表などが必要になる場合がありますので、診察時にこれらを持参くださいとお願いすることもあります。
診断は、ICD-10やDSM-Vに則って行いますが、大人の場合は、質問紙法やWAIS-III、CARRS、といった専門的な検査を当院で行い、診断の補助に使います。

 

どんな治療をするの?

大人の発達障害の場合、患者さんの特性や状態に応じた治療となります。特に薬物治療に関しては、ADHDに対し、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの不足を改善する働きのある薬剤が、日本では現在2種類あり、当院でもこれらの薬剤を処方することができます。また、うつ病、不安障害などの二次障害がある場合は少量の抗うつ薬、や抗不安薬などの気分安定薬や漢方薬などの薬物療法が用いられることもあります当院では、大人の発達障害の方のためのセルフケアセミナーを隔週で行っております。これは、上記診断に該当する方で、対人関係の作り方の見直し、コミュニケーションスキルの獲得、社会ルールの定着、日記指導など、を目的としてセミナーに参加していただき、同じ特性を持つ方同士の交流や職場での工夫などを相互に理解、獲得してもらおうと行っております。

 

受診後の留意点

親をはじめとする家族や友人、会社関係者など本人と取り巻く人たちが、大人の発障害に対する知識や理解を深め、本人の特性を理解することが、本人の自尊心を低下させることを防ぎ、自分を信じ、勉強や作業、社会生活への意欲を高めることにつながります。