池澤クリニック

自律神経失調症

どんな病気なの?

自律神経失調症とは、よく使われる病名ですが確立した疾患概念や診断基準があるわけではなく、自律神経系の不定愁訴があっても、その症状が一般的な疾患概念にあてはまらない場合にこの病名をつけることが多く、非常に広い定義として使われる病態名です。例えば、更年期障害、中枢神経疾患、うつ病などでも広い意味では自律神経のバランスが崩れたことが起こっているので、自律神経失調症を併発しているといえます。日本心身医学会では、自律神経失調症とは、種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの、と定義しています。つまり、様々な自律神経症状が認められること、検査で身体疾患が見つからないこと、明らかな精神障害が認められないこと、これを満たすような状態のことを自律神経失調症としています。気分や不安といった精神症状は目立たず、自律神経症状だけが認められている場合に自律神経失調症と診断されるのです。

ではまず、自律神経とは、いったい何でしょうか?
私たちの体には、自分の意志でコントロールできる部分と、コントロールができない部分とがあります。例えば手や足は自分の意志で自由に動かすことができますが、心臓を動かす、胃腸を動かす、汗をかくといったことを自分の意志でコントロールすることはできず、生命活動に関わる重大な部分に働き身体の恒常性を維持するために自然にコントロールしてくれる(自律)神経、それが自律神経です。
自律神経は内臓の機能やホルモン分泌などのすべての器官を調整する神経で、我々の意識や状態とは無関係に24時間休みなく働きます。その働きのおかげで睡眠中も心拍が止まることはなく(血管の収縮、血液量の変化)、消化器官は栄養を分解して体に蓄え、日々の活動に必要な準備を整えながら過ごすことができまし、外気の変化に合わせ、体温調節や体内湿度調節(発汗)を行ってくれます。
通常は自律神経を構成する交感神経と副交感神経があります。交感神経は主に外界での活動を中心に担う(筋肉の緊張、心臓の拍動が早くなる、瞳孔を開くなど)神経で、いわば興奮に関与し、ヒトという動物が外界で獲物を獲る、敵から身を守るなどの戦闘モードになる神経です。現代生活においては仕事をする、勉強をする、などのときに交感神経は活発に働きます。副交感神経は、主に内部の生体活動を中心に担う(胃腸の蠕動運動が促進される、筋肉の緊張をゆるめる、脈や呼吸をおだやかにするなど)神経で、いわば沈静、弛緩に関与し、ヒトという動物の生体を恒常的な内部活動を維持するための安らぎの神経です。現代生活においては仕事や勉強を離れてゆっくりする、などのときに副交感神経は活発に働きます。車でいえばアクセルとブレーキのような役割をする神経がバランスを取ることによって、体の機能を一定に保っています。しかし、ストレスなどの刺激が長時間続くとその2つの神経のバランスが崩れ、交感神経の活動が強まりすぎていて、慢性的な過緊張状態になり、自律神経失調症になってしまいます。

 

どんな症状が出るの?

自律神経は全身の器官をコントロールするため、バランスが崩れると全身の機能に支障をきたして、さまざまな症状が出ます。最近は内科や整形外科などで検査をしても悪いところが発見されず、神経科、心療内科などの専門医を紹介してくれるケースが多くなりました。以下に代表的な症状を記します。

   ・頭痛 ・胸焼け ・肩こり ・吐き気 ・めまい ・嘔吐  
   ・耳鳴り ・腹痛 ・全身倦怠感 ・下痢 ・動悸 ・便秘  
   ・胸苦しさ ・残便感 ・呼吸困難感 ・食欲不振 ・しびれ ・頻尿  
   ・口渇 ・残尿 ・げっぷ ・冷え ・上腹部不快感 ・多汗  


また、自律神経失調症の原因としては、症状が一人一人違うように、その原因もまた一人一人違います。 自律神経のバランスが乱れるのには、いろいろな原因が複雑にからみあっていると言われています。

  • ▷生活のリズムの乱れ
    • 夜更かし、夜型人間、夜間勤務や、子供の頃からの不規則な生活習慣など、人体のリズムを無視した社会環境やライフスタイル
  • ▷過度なストレス
    • 仕事などの社会的ストレス、人間関係、精神的ストレス、環境の変化など、過剰なストレスが蓄積する。
  • ▷ストレスに弱い体質
    • 子供の頃からすぐ吐く、下痢しやすい、自家中毒、環境がかわると眠れないなど、生まれつき自律神経が過敏な人もいます。また思春期や更年期、身体が弱っているときは自律神経のバランスが乱れやすくなります。
  • ▷ストレスに弱い性格
    • ノーと言えない、感情処理が下手、気持ちの切り替えができない、人の評価を気にしすぎる、人と信頼関係を結ぶのが苦手、依存心が強いなど、ストレスへの抵抗力が弱い傾向のある人。
  • ▷環境の変化
    • 現代の生活は適応能力が衰えやすく、社会環境の変化、人間関係や仕事などの環境の変化などへの不適応や過剰適応から自律神経失調症になる場合もあります。
  • ▷ホルモンの影響
    • 甲状腺ホルモンの過不足によって、代謝が活発になったり、落ちることで自律神経に影響を与えることがよく見られます。また、女性ホルモンの変化も、自律神経の働きに影響を与えます。このため、自律神経失調症は男女ともに認められますが、女性ホルモンの生理的な変化がある、女性の方が甲状腺ホルモンが乱れやすい、女性の方が疫学的に気分障害や不安障害が多いため、女性の方が明らかに自律神経失調症の発症率が多いのです。

 

どんな診察や検査が必要なの?

自律神経失調症を診断するにあたって、検査はあまり行うことはしません。というのも、自律神経を評価する方法はいくつかあります。(例えば、シェロング起立試験、バルサルバ呼吸試験、頸動脈圧迫試験など)
重症度を評価しても正確な診断に結びつくことが少なく、治療的な意義がほとんどないからです。そのため、明らかな身体の病気が否定されれば自律神経失調症として、治療を開始していくことがほとんどです。
当院ではこのような自律神経の検査は一部行いますが、身体的な検査と問診によって診断をしていきます。

 

どんな治療をするの?

一口に自律神経失調症の治療といっても、症状・タイプなどにより、身体と心の両面に働きかける治療、生活環境を整えるなどのことを行う必要があります。
当院では、自律訓練法などによるセルフコントロール、薬物療法、カウンセリングなどの心理療法を行い、ストレッチなどの理学療法、音楽療法やアロマテラピーなどリラクゼーション療法、自己管理による食事などの生活習慣の見直しを提案しております。
薬物療法としては、ストレスを和らげることで、自律神経症状を改善する、身体症状が改善することで、悪循環をなくす、という点で導入することがあります。自律神経失調症では交感神経が過緊張状態となっていることが多く、それが原因で自律神経症状が認められることが多いです。薬物療法によって、交感神経の働きを和らげることで、症状の改善が期待できます。種類としては、自律神経調整剤、漢方薬、場合によっては抗不安薬などを用いることもあります。非薬物療法として、まず、呼吸法が重要です。呼吸は、私たちが意識してコントロールできる唯一の自律神経です。普段は意識することなく自律神経にまかせて呼吸していますが、意識して調整することもできます。自律神経失調症には腹式呼吸が効果的と言われており(吸気ではなく、呼気時を長く保つ)当院では、この呼吸法に自律訓練療法を合わせた方法を取り入れております。
また、生活・食事指導では、生活リズムを整える、3食バランスの良い食生活、運動習慣(太陽を浴びる)、カフェインを避ける、習慣的な飲酒を控える、タバコを控えことを勧めております。
食事指導としては、具体的にはビタミンA、B、C、Eを含む食事をとることをお勧めします。ビタミンB群は神経の働きを正常に保つ働きがあり、強いストレスが続くと急激に消費されます。また、ストレスが加わると、副腎皮質ホルモンを分泌して全身の抵抗力を高めます。この合成に欠かせないのがビタミンCですので、普段からビタミンCをたっぷり摂ることが、ストレス対策になります。ビタミンAやEも、自律神経をコントロールし、症状を緩和させる効果があります。また、カルシウムはイライラを鎮め、不眠解消の効果があります。

 

受診後の留意点

当院では、内科的、心療内科的アプローチで診療しています。採血はもちろん可能ですし、必要に応じて心身の両面から治療を行っています。治療法に質問がある場合には、診察時にお尋ねください。